ワイヤレスイヤホンが、徐々に普及しはじめて2017年にAirPodsが発売されてからは、一気にワイヤレス化が加速されました。
ただ、一概にワイヤレスイヤホンと言っても、性能がまったく異なるものが存在します。
最近よく聞くようになった完全ワイヤレスイヤホンであれば問題ないのでは…?
いえいえ、完全ワイヤレスイヤホンはケーブルがない左右独立のBluetoothイヤホンという外見上の意味で、規格や仕様の保証をしているわけではないんです。
そうなんだーー、その割には”完全”ってなんか偉そうで…英語だとパーフェクトでしょ。
海外では TWS(トゥルーワイヤレスステレオ)といいます。日本でも最近まではトゥルーワイヤレス、完全ワイヤレス、フルワイヤレスとさまざまな呼称でしたが、完全ワイヤレスに落ち着きました。いちばん発音しやすいからと言われています。
確かにいちばん言いやすいけど海外では、パーフェクトワイヤレスって通じないのよね。また、ガラパゴス。。。
ガラパ…
それはさておき、完全ワイヤレスイヤホン購入時のチェックポイントをお伝えしていきます。
完全ワイヤレスイヤホン CheckPoint1 左右イヤホン間の接続安定化
左右イヤホン間の接続安定化とは、Bluetoothイヤホンの欠点である音飛び、音切れを解消する技術です。
Bluetoothは、数m範囲の近距離無線通信です。
電波によって通信しているため、同時に複数の機器と接続している場合や、人が多い都市部の駅での移動中など、ワイヤレス通信が飛び交う場所では音飛びをするケースがあります。
この欠点を解消する技術として、NFMI、TWS Plusがあります。
NFMI
「NFMI」とは、完全ワイヤレスイヤホンの左右の通信を安定化させる技術。
このNFMIとは、Near Field Magnetic Inductionの略で、近距離磁界誘導と呼ばれる技術。この技術の元自体は、半導体メーカーであるNXP Semiconductorsが補聴器向けに作られたものです。
NFMIはBluetoothとは異なり“電波”ではなく“磁気”で無線通信をしています。従来のBluetoothは電波を通しにくかった人間の頭の外周を通りまわりの電波に影響されやすい、NFMIは最短距離、しかも電波ではないのでまわりの電波に影響されない(頭はほぼ水分で、磁気なら通すため)ということです。さらに、磁気ベースの技術なので、人体への影響も少ないというメリットがあります。
このNFMI技術で、左右のイヤホンが途切れにくくなります。
購入時に、NFMIまたはMiGLO(NFMIのブランド名)表記を確認しましょう。
TWS Plus
「TWS Plus」(Qualcomm TrueWireless Stereo Plus)とは、完全ワイヤレスイヤホンの通信安定化と低消費電力化を実現したQualcomm開発の技術のことです。
TWS Plus搭載の完全ワイヤレスイヤホンは、状況に応じてイヤホンの親子関係を替えることができます。
従来の完全ワイヤレスイヤホンでは、スマホからのBluetooth電波をイヤホンの片側で受け、それをもう片側にリレーする方式を取っています。
そこで、通信障害などでリレーされたほうのイヤホンが途切れるということがおこります。
それがTWS Plus搭載のものだと、スマホからの電波をイヤホンのLとRの両方で受けることが可能。両方で受信するので、電波が途切れにくく、省電力ということになるのです。
このTWS Plusは、完全ワイヤレスイヤホンに搭載しているQualcommのBluetoothチップに組み込まれています。
Qualcomm QCCかQCCの表記で書かれています。
ただし、TWS Plus搭載イヤホンと出力するスマホの搭載チップがSnapdragon845以降でファームウェアでTWS Plusに対応していないと機能しません。「AQUOS R3」「Xperia 1」など。
ちなみに、非対応スマホだと従来のBluetoothワイヤレスになるので、割高のTWS Plus機能付きを買う意味がありません。
このSnapdragonは現在Androidスマホ用。Appleは例外で、独自のチップを採用しています。
完全ワイヤレスイヤホン CheckPoint2 コーデック
ワイヤレスイヤホンは、有線イヤホンと違い音を圧縮してBluetooth送受信します。
この圧縮・接続するコーデックにより音質や送受信速度が変化。
例えば、iPhoneユーザーが良く使っているAirPodsをAndroid端末で使うと音質がかなり悪くなります。
もちろん、音は聞こえるのでAndroid端末でAirPodsを使っている方もいらっしゃると思いますが、iPhoneとAndroidでは、完全ワイヤレスイヤホンの接続コーデックが全く異なっており、AirPodsをAndroidと接続した場合に、性能が一気に落ちてしまうのです。
Bluetooth接続コーデック iPhoneとAndroid
iPhone:SBC、AACのみ
Android:SBC、aptX、aptX LL、aptX HD、LDAC(AAC以外OK)
- SBC: 圧縮率を優先したコーデック。音質が悪く、音楽再生には向かない。また、遅延が大きいため、動画再生との相性が悪い。
- AAC:音質は普通。遅延はSBCよりは小さいが、動画再生時は、ズレを感じる場合も多い。
- aptX:音質は普通。遅延はSBCやAACよりも小さい。動画再生時は、少しズレを感じる場合がある。
- aptX LL:LLはLow Latencyの略で、遅延が少ないことを示す。音質はそこそこであり、遅延が非常に少ない。動画再生の際も、ズレを感じることはほぼない。
- aptX HD:aptXをハイレゾ対応にしたもの。音質は非常に良い。遅延はaptX-LLに比べ大、動画再生時は、少しズレを感じる場合がある。
- LDAC:ソニーが開発したハイレゾ対応コーデック。音質は非常に良い。遅延はaptX-LLに比べ大、動画再生時は、少しズレを感じる場合がある。
要するにAirPodsをAndroidと接続した時に、AACではなくSBCになってしまうため音質が悪くなってしまうのです。
Android端末は、aptXの完全ワイヤレスイヤホンを選んでください。動画をよく見る方はaptX LLがおすすめ♪
完全ワイヤレスイヤホン CheckPoint3 Bluetoothのバージョン
Bluetoothの規格には「Class」と「バージョン」があります。
Bluetooth Class
ワイヤレスイヤホンの通信範囲は、Bluetoothの「Class」により決まります。
「Class3」なら最大1m。「Class2」なら最大10m。「Class1」なら最大100mとされます。
ワイヤレスイヤホンには「Class2」が採用されているので、10mとなります。
通販サイトによっては、通信範囲を5mや20mと表記していたりします。5~20mの範囲内ならばClass2を採用しているはず。なので、通信範囲は10m程度と考えてさし支えありません。
とはいえ、10mもあれば何ら支障をきたさない場合がほとんどです。
「Classなんてものがあるんだな」くらいに思っておいて大丈夫です。
Bluetooth バージョン
「Class」は通信範囲基準ですが、「バージョン」は 転送速度基準です。
現在市販されているワイヤレスイヤホンのBluetoothのバージョンは、V4.0~5.0までといったところです。
数年前までは、V3.0が一般的だったりもしましたが、これからワイヤレスイヤホンを購入するばあいには、心配する必要はほぼありません。
たしかにV4.0と比較すると、V5.0のほうがデータ転送速度が速い、転送能力が高いなどの違いがあります。
しかし、動画の再生ならまだしも、音楽を聴く程度ならば無関係(そもそものデータ通信量が少ない)といってさし支えありません。
なお、上位のBluetooth規格を使用するさいには、ペアリングを行うスマホもその規格に対応(互換性の問題)している必要があります。
イヤホンがV5.0、スマホがV4.0ならば、実際の転送性能などはV4.0として処理されるということです。
ちなみに、iPhone XやiPhone 8はBluetooth V5.0対応端末です。
完全ワイヤレスイヤホン CheckPoint4 プロファイル
「プロファイル」は、そのデバイスで何ができるのか(実装機能)を表しています。
以下、ワイヤレスイヤホンに採用されるプロファイルの一覧です。
A2DP
正式名称:Advanced Audio Distribution Profile
高音質な音楽をステレオで伝送するためのプロファイル
AVRCP
正式名称:Audio Video Remote Control Profile
再生や停止、スキップや早送りなど、AV機器のコントロールに関するプロファイル
HSP
正式名称:Headset Profile
携帯電話とヘッドセット間で、双方向にモノラル音声のやり取りをするためのプロファイル
HFP
正式名称:Hands-Free Profile
HSPの機能に加え、電話の発信や着信時の通話開始操作(ハンズフリー通話)をするためのプロファイル
『A2DP』は、当然のことながら、全てのワイヤレスイヤホンに実装されています。ハンズフリー通話もできるワイヤレスイヤホンがほしい場合には、『HFP』の表記があるかで区別できるということです。
覚えておくと、ワイヤレスイヤホン選びが楽になりますよ。
完全ワイヤレスイヤホン CheckPoint5 駆動時間・連続再生時間
駆動時間・連続再生時間とは一回の充電で何時間つかえるかです。
完全ワイヤレスイヤホンは、2~5時間(※売れ筋上位機種参照)。けっこう差がありますね。
「できるだけバッテリーの持ちがよいワイヤレスイヤホンがいいな」と誰しも考えます。しかし、バッテリー性能は、イヤホンの重量を左右します。
高性能なバッテリーほど大型化し、重量が増します。重たいイヤホンだと、耳にかかる負担が増大します。
『充電性能』と『装着性能』のバランスに配慮して選ぶのが大切です。
まとめ
今回は、完全ワイヤレスイヤホンの概要と仕組みについてまとめました。
完全ワイヤレスイヤホンどこに注意して選べばよいのかなど全体像を把握できたかと思います。
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